研究ブログ28 Sep 2015
第17回EISCAT国際シンポジウム出席(小川)
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プロジェクトメンバーの細川(電気通信大学)です。1 月後半から 2 月の始めにかけて、プロジェクトメンバーが北欧のあちこちに出張して、光学観測機器の設置やメンテナンス作業を行っています。私は、1 月 23 日からノルウェーのトロムソにある欧州非干渉散乱レーダー(EISCAT)サイト来ています。9 月に機器の設置に来たときからほぼ 4 ヶ月ぶりの訪問です。
9 月には雪がなかったトロムソですが、いまは写真にあるような雪景色です。ただ、ここ数日は気温が高く雨も降っているために、雪が解け、道路はアイスバーンとなりスパイクをつけて歩かないとすぐに転んでしまうような状態です。
本プロジェクトでは、昨年 9 月に 4 台の全天カメラをトロムソに設置してから、夜間自動観測を継続してきました。オーロラは様々な波長(= 色)で光っていますが、4 台のカメラを用いて異なる波長で光るオーロラを同時に観測しています。光学機器と、欧州非干渉散乱レーダーとの同時観測も複数回にわたって実施し、多くの脈動オーロラの事例を観測することに成功しています(観測フェーズ 1)
今回の出張の目的は、昨年 12 月に打ち上がったあらせ衛星(ERG 衛星)との衛星・地上同時観測に備えて、トロムソに設置している光学観測機器の観測態勢を次のフェーズ(観測フェーズ 2)に移行することです。5 日間という短い滞在期間ですが、国立極地研究所の小川さん、高橋さんと協力して作業を行いました。また、EISCAT レーダーによる特別実験も実施しています。
あらせ衛星との同時観測では、北欧の 3 地点において、1 秒間に 100 枚の画像を取得するオーロラの超高速撮像を行います(100 Hz 観測)。そのために、これまで 10 Hz で運用してきたカメラのうちの 1 台を 100 Hz で観測するためのシステムにコンバートします。10 Hz 観測では、ASI-2 という大きな光学系の後段に EMCCD カメラが接続されていたのですが、それを注意深く外し、ドームに固定するための金属パネルに取り付けます。
金属パネルごとカメラをドームに持ち上げて固定し、魚眼レンズを取り付け、さらにその上に干渉フィルターを載せます。干渉フィルターは、宇宙空間からの電子の降下に伴って素早く発光するオーロラだけを観測するために使用しています。ドームの中にたくさんのカメラが設置されていて、場所が非常に狭いのですが、何とか設置をすることができ、予定通りに 100 Hz の観測をスタートすることができました。
他の 3 台のカメラは、観測フェーズ 1 の期間と同様に、狭帯域の干渉フィルターを用いて、特定の波長で光るオーロラを観測します。異なる色で光るオーロラの明るさを比較することで、宇宙空間から降下する電子のエネルギーを推定することが狙いです。カメラを光学系から一度取り外し、メンテナンスを行ったのちに再度取り付けて、光軸やフォーカスの調整を行います。
5 日間という非常に短い滞在でしたが、予定していたメンテナンス作業をすべて完了させることができ、あらせ衛星との同時観測の準備が万端整いました。
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