地球周辺の宇宙空間は、ジオスペースと呼ばれています。このジオスペースには、太陽に起源をもつ電子や、イオンが存在しています。この電子やイオンが、ジオスペースから磁力線に沿って、地球の超高層大気(高度約100キロメートル)に降りこんできて、その場の中性原子や分子と衝突して起こる発光現象がオーロラです。
上記の動画は、国際宇宙ステーションから撮られたオーロラの映像(出典: NASAウェブサイト)です。
この動画からわかるように、空間構造のハッキリとしたオーロラ(ディスクリートオーロラと呼ばれています)は限られた場所にしか存在せず、オーロラの大部分はぼんやりとしたディフューズオーロラと呼ばれるものであることがわかります。このディフューズオーロラは、時間とともに点滅を繰り返す性質があることが知られており、「脈動オーロラ」と呼ばれています。
「脈動オーロラ」は、ごく一般にみられるオーロラのひとつの形態ですが、数秒から数10秒ごとに光ったり消えたりし、光っている間にもさらに数Hzの周期で発光強度が変調することがわかっています。この二つの時間周期の明滅は、オーロラを光らせる電子が、それぞれ周期性をもって磁気圏から降り込んでいることを表しています。ここでは上記の数秒から数十秒の準周期的な明滅を主脈動 、主脈動の中にある数Hz周期の細かい変動を内部変調と呼ぶことにします。
つまり、脈動オーロラの時間変動には、複数の周期性から成る「時間的階層構造」が再現性をもって普遍的に存在しており、このことは、その背後に普遍的な物理過程が存在していることを示唆しています。
ジオスペースでは、科学衛星による探査によって、ホイッスラーと呼ばれるプラズマ波動が観測されています。このプラズマ波動は、磁気圏の電子と相互作用をすることによって、電子をジオスペースから散乱(ピッチ角散乱)させることができると考えられています。また、ホイッスラー波動は、脈動オーロラとの関連性を想像させる時間変化を示すことが知られています。
ホイッスラー波動は、典型的には数秒から数十秒周期で集団的に発生します。集団的に発生する波動の内部を拡大して観測すると、細かなエレメントが周期的に発生していることが分かってきています。このエレメントの繰り返し周期の多くは数Hz程度です。
このことから、ホイッスラー波動の集団的発生の周期が脈動オーロラの主脈動と、そして、エレメントの繰返し周期が脈動オーロラの内部変調と対応しているという仮説を我々は立てています。本プロジェクトでは、オーロラ生成の源である磁気圏と、オーロラが光る電離圏の双方を同時に観測し、最先端のシミュレーションも組み合わせることで、この仮説が正しいのか、それとも異なる生成過程があるのかについて明らかにすることをめざします。
パル君の紹介
ピッチ角散乱で磁気圏からやってきたパルセイティングオーロラの妖精。普段はぼーっとして頼りない地味キャラだが、実は内にエネルギーを秘めている。スイッチが入れば、サイヤ人のようにスゴキャラに変身することがたまにある。
北欧に地上光学観測機器を投入し、レーダーや、アラスカにおいて予定されているロケット実験、科学衛星ERGを組み合わせた脈動オーロラの集中観測を実施します。人工衛星観測、ロケット実験、地上観測、シミュレーションをそれぞれ担当する4つのチームで研究を推進していきます。
研究代表者 | 藤井 良一(名古屋大学) |
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研究分担者 | 三好 由純(名古屋大学)、浅村 和史(宇宙科学研究所)、加藤 雄人(東北大学)、 細川 敬祐(電気通信大学)、小川 泰信(国立極地研究所) |
連携研究者 | 大山 伸一郎(名古屋大学)、齋藤 慎司(情報通信研究機構)、横田 勝一郎(大阪大学) |
協力研究者 | 笠原 慧(東京大学)、齋藤 義文(宇宙科学研究所)、三谷 烈史(宇宙科学研究所)、 坂野井 健(東北大学)、寺本 万里子(九州工業大学)、栗田 怜(名古屋大学)、 野澤 悟徳 (名古屋大学)、宮岡 宏 (国立極地研究所)、 田中 良昌 (国立極地研究所) 、 八木 学(理化学研究所)、野村麗子 (宇宙航空研究開発機構)、北原理弘(名古屋大学) |
これまでのメンバー | 疋島 充(宇宙科学研究所) |
地上観測チーム | 藤井 良一、細川 敬祐、大山 伸一郎、小川 泰信、三好 由純、栗田 怜、野澤 悟徳、 宮岡 宏、田中 良昌、坂野井 健、寺本 万里子 |
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ロケットチーム | 浅村 和史、横田 勝一郎、笠原 慧、三谷 烈史、坂野井 健、野村麗子、齋藤 義文 |
人工衛星チーム | 加藤 雄人、疋島 充、八木 学、北原 理弘 |
シミュレーションチーム | 三好 由純、齋藤 慎司、栗田 怜 |